2018 4 18

DTP目線のファブプロダクトアウト

登壇者

CANDO CORPORATION & SHAREFL

柳谷 武(やなぎや たけし) 氏

グラフィック・ウェブ・プロダクト・アプリUIなどのデザインやコーディング実装を行う。

スタートアップのピッチデザインや企業広報ツールの受託制作をする傍ら、センサーやファブを活かしたコンテンツ開発のラボを運営。書道、神楽、将棋、おにごっこ、おままごとなどの再構築を実施。

 

INTUS.

Sukima.

柳谷 環(やなぎや たまき)氏

広島県在住。約10年いたWeb制作会社を卒業して、2015年より、デジタルファブリケーションの技術を使った商品開発を行い、「Sukima.」というブランド名でおもちゃや雑貨を販売。ブランドコンセプトは「インテリアにもなるようなおもちゃ」で、片づけた後も飾りたくなるようなデザイン性のあるプロダクトが特徴。また、スマホアプリとの連動や、ワークショップにもつながるものづくりを行う。2017年より「イノベーション・ハブ・ひろしまCamps」にてFABアドバイザー。

 

柳谷環と申します。INTUS.という屋号で個人事業主をしてます。Sukima.というブランド名で子供のおもちゃとか、雑貨とかを作っています。広島を中心に、ミニメーカー、ちっちゃいメーカーとして活動し、あとはデザインの仕事や、ライターとしての記事を書いたりしています。

 

柳谷武です。INTUS.とは別のCANDO CORPORATIONという会社で17年ぐらいWebやグラフィックのデザイナー、プログラマー、カメラマンをしてます。それと、シェアフルという非営利のITラボを運営しています。

~本日の内容について挿入~

グラフィックから、ファブを活用したプロダクトへ

これは「エア書道」という、骨格センサーを使ったアート系の体験コンテンツを作って提供する作品で、網戸で作ったスクリーンにプロジェクターを当て、骨格センサーを使って、人の体の動きで筆圧を表現しながら書道パフォーマンスができます。

Kinectというセンサーを使っている関係で、2011年には福岡で開催されるクリエイティブの祭典「明星和楽(1回目)」に、Microsoftさんのブースで出展させてもらいました。

例えば、エア書道でもファブを活用していまして、書いた字を方眼に合わせて切り出して体験中に渡せしたり、LEDサインボードをつくったりするところでレーザーカッターも使っています。

 

また、元々広島の企業でしたが、福岡に本社が移った「otta(オッタ)」というスタートアップに関わっています。アプリのデザイン、Webのデザイン。投資家向けのピッチブックデザインなどのお手伝いをしています。また東京展示会や、クラウドファンディングなどで「こんなサービスです」と伝える際に、アニメーションを作ったり、その展示用の什器とかを設計したりとかもしてます。

什器はレーザーカッターでつくっています。スマホの厚みと、ottaの実機は厚みが違うので、手に取りやすいように中身を工夫したりしながら展示トレイを作りました。

 

私たちは、プロダクトのデザイナーではなくて、グラフィックとかWebをメインでやっているのですが、レーザーカッターがない頃は、こういう展示台あったらいいねっていう時に、業者さんにお願いするしかなく提案が通りにくかったのですが、レーザーカッターが家にあると、つくってしまえるので提案が楽になりました。

 

ファブが広げる提案

 

仕事としては、Webと紙とアニメーションを、2000年頃からはじめたのですが、その中で、プログラミングとかインタラクティブコンテンツとかをやるようになり、子供が生まれてからは写真を始めま、撮影の仕事も受けるようになりました。2014年ぐらいからは、ファブも自分の中で提案する引き出しになってきました。今までのスキルも絡めつつ、映像表現や遊びの体験にもファブを絡めることが増えてきました。

 

ひとまず、そもそもファブってなに?ってところのおさらいですが。

デジタルファブリケーションとは何なのか。「ファブリケート=創る」と、「ファビラス=素晴らしい」を合わせて、「ファブ」と言うらしいです。

ファブ施設がいっぱいあると、データを渡せば実物が流通しなくても、ものが作れる時代になってくるので、各地にレーザーカッターのような機器があるといいですよね。世の中的にファブを活用する流れになっていくと便利になるのではないでしょうか。ファブと呼ばれる機械はレーザーカッター以外にもあり、ペーパーカッター、デジタルミシン、3Dプリンターや、CNCというドリルで切ることで作れる機材など様々です。

 

WEBデザイナーからメーカーへ

 

私は、Web制作会社で働いていた頃、子供向け商品のECサイトの運営に関わっていました。その中で自分たちでオリジナルのおもちゃをつくるプロジェクトがあったんですが、結局その事業自体がなくなってしまったので、自分でやってみようと思って、一念発起して4年前に自宅に50万円位のレーザーカッターを買ったんです。すごく安い機種なんですけども、そこそこ綺麗に加工できて重宝しています。また、レーザーカッターを使って活動していることからのつながりで、広島県のイノベーションハブCampsという施設のファブスペースで、アドバイザーとして入らせてもらったりしてます。

 

今は天然の木を使った「子どももママも欲しくなるようなおもちゃ」を作っています。テーマは「Toys like interior」。家で作って、家で物撮りして、モデルは子供にやってもらってます。まさに家業って感じですね。

 

私が作ってるものはおもちゃなんですけど、あんまりカラフルでガチャガチャしていないものなんです。遊び終わったキャラクターモノのおもちゃが散らかってると、「早く片付けて!」ってイライラすることもありますよね。もっと親も欲しくなるようなおもちゃで、片付けなくってもいいようなおもちゃがあったらいいなと思って、始めたブランドになります。

 

コンセプトは、散らかってても風景になるおもちゃ作り。

例えば、漢字でコマが書いてあるのが普通の将棋ですが、漢字だとどうやって動かしていいのかと分からない。でも将棋って子供の頃からやってると先を読む力がつくらしいいって言うのを聞いて、子供にやらせたいなーと思ってました。そしてつくったのが「いえしょうぎ」です。漢字を使わなくても進む方向がわかる「点と線」だけで作ってます。点はひとつ、線はコマがいなかったらどこまでも行ける、っていうルールです。外国の方も子供も「線と点」のルールを覚えちゃえば、感覚的にわかる新しい将棋です。

ワインやコーヒーに合う、インテリアになじむ将棋なので、やりかけのまま机にだしっぱなしでも様になります。しまう際は、駒だけ瓶に詰めたりとか。隠さずしまう、見せながらだしっぱなしでもオッケー、みたいなプロフダクトもテーマの一つです。

 

もうひとつ商品を説明させてもらいますと、この写真は「木製のお金」です。一番最初に販売を始めた商品になります。子供が小さい時にお買い物ごっこをする際に使えるように作りました。レジのアプリもリリースしてお買い物ごっこで連動できます。

 

お金のおもちゃってすごいたくさんあるんですが、プラスチックとか紙ってあまり大事に使わなくなってしまっていて。埃かぶってるから捨てちゃったりするんですよね。お金を大事にできる素材で作りたいなと思って、天然の木でつくっています。使ってすごく触り心地も良いですよ。お金自体は平面的なものでレーザーカッターでつくりやすいモチーフです。「お金のお勉強をさせたい」ニーズがあるので、プロダクトとしては意味をもつと、木を加工した以上の価値になっていくと思います。

 

最初は市販の素材で加工して販売をしていました。実際に売り始め、卸先もでき、展示会に出るタイミングなどを機に、商品の材質変更や量産体制の目途をたて、プロダクトのバージョンアップさせていきました。発売から1年経って今の材料と厚みになりました。

 

メーカーとしての稼ぎ方

 

製品を販売することについてですが。制作会社さんのような受託制作の場合にはない考え方になります。例えばアイコンをウェブサイト用につくり、ひとつ5000円とかで買ってもらえたとします。ですが同じアイコンが、モノとしての価値があれば、自社プロダクトとして「建物に張り付けるサイン」として製品化して1500円で販売すると、たくさんのお客さんが買ってくれて4人以上になると売り上げは超えますよね。同じ絵でも価値も価格も違い、沢山の人に購入してもらえるほうが、最終的には儲かる。というのがグラフィックデザイナーがプロダクト目線でになったときの、別の稼ぎ方なのかなと思います。

 

こちらは挿し木です。天然の木のそのままの色で、「もりドミノ」という商品です。

枝の部分と葉っぱの部分を、木の色の違いで楽しみたいなー、と思って挿し木をしてます。玩具として出してたんですが、「子どもが枝を外そうとして割れました」との声が多く今は製造やめています。かわいいんですけどね。

今回は「もりドミノ」の作り方が、レーザーカッターの勉強になると思うので、挿し木をするワークショップを準備しています。ご予約されている方は後で、GOODAY Fab DAIMYOさんのほうにお越しいただけたらと思います。

 

ちなみに、レーザーカッターは、紙への印刷よりも気を配ってデータを作らないといけません。二つのパーツを見てもらうと、実はこれピンクの部分は二度切りしてしまいます。ここは1本の線にしないといけないわけです。さらに、実際に焼失して失われた分を戻すために、オフセットという、遠回りしながら切るためのデータをつくる必要もあります。どの程度オフセットしたらいいか、0.01ミリずつちょっと違うデータで切断して、綺麗にはまるのどれか検証する必要があります。オフセットしないまま挿し木をすると「ポロンッ」と落ちちゃうのでオフセットが大事になります。ちょうど今日のワークショップで体験してもらえるといいかなとおもいます。

 

職人 ~ ミニメーカー ~ メーカー

 

私達の立ち位置で言うと、職人さんと、メーカーさんの中間かなと思っています。メーカーさんは大量生産、工場持っていっぱいものを作って売る、職人さんは、一点一点作る、みたいな人。すごいクオリティは高いわけです。

それらの間、メーカーほど大量にものは作れないんですけど、機械が精度高いので、結構繊細な加工もでき、それなりにいいものを作ってくれるんです。

この立ち位置は「ミニメーカー」かなと思ってます。ミニメーカーは何千個も量産となると難しいです。職人さんの小ロットと、メーカーさんの大量ロットの間ぐらいです。

新しいプロダクトの開発については、職人さんはその技術を使ってゆっくり作ってる。メーカーさんも一回生産ラインができてしまうと、ラインを変えて次の商品を作るのは、結構大変なのですが、ミニメーカーで一人でやっていると、企画して設計して、試作もすぐ出来ますし、プロダクト開発のスピードは結構早いと思います。開発も少ない人数でもある程度のものは作れています。

 

ミニメーカーのいいところは、とりあえずやってみれる、やって売ってみれるということで、売れたらまた作って行けばいいし、売れなかったらすぐ廃盤にすることもできる。新しいものを、自分のできる範囲で作りやすい環境だと思います。

 

今回グラフィックデザイナーさん向けの話になりますので、制作会社さんの目線でのお話をしてみます。受託制作をしていると、印刷物作って、広告作って、Web作って…とお客さんから言われて作ります。デザインと言っても、建築とか店舗デザインとなるともっと広く、商品自体のデザインってなると、さらに広いくなりますよね。でもさらに、「モノを売る」っていうところになると、在庫管理、注文管理、売上管理、材料の仕入れ、量産をどうするか、毎日の発送、お店を持てば、店頭接客があったりします。ミニメーカーって、小規模だから色々できますよとお話しましたが、これを全部やってるって状態が今のSukima.の状態です。

 

販促もしないといけないし、パンフレットも作らなきゃ、でも商品開発もしたいし、でも日々発注が入ってくる、イベント呼ばれたら店頭に立って売らなきゃ、っていうのを全部やってると、メーカーさんの大変さがわかってきたと思います。

 

ミニメーカーとして活動する際に気をつけること

 

雑貨を作っているメーカーの立場で、それを直販もしてますし卸しもしています。その値段をつけるときに、デザイン費、製造原価、制作している人件費、などを含めて考えて、定価の3割ぐらいが原価となるように納めています。直販で売った場合は、粗利で7割入ってきます。

でも、一人で売るにはやはり限界があるので、広げていきたい思いから「卸し」もしてます。卸しの場合は、6割で卸してます。その場合、直販と違って粗利の部分、私がもらえる粗利の部分て、3割しかないんですよね。「そういう仕組みなんだ」っていうのも、やり始めてわかってきました。定価も、私だったら高くて買わないわと思っても、値段下げちゃうと卸すともう赤字に…という場合もあるので、値付けについてもやりながらですが勉強になりました。

 

直販だけでにする予定で低く値付けをしてしまっていると、後で販路を広げるために卸しをはじめようと思っても、上代をあげれなくて困るの場合が出てくると思います。最初から卸しができる値段にするか、卸さない、って決めるか、どちらかにしておかないと。商品開発する上で値段を決めるというのは、卸しをするかどうかが結構影響してきそうです。

 

とりあえずモノを作ってくれる環境は、ファブスペースがあったらできるんですが、それをどういう展望で売っていくのか。直販しかしないのであれば、ここまで考えなくてもいいかもしれないですが、卸してみようと考えているのであれば、値段の付け方も考えた方がいいと思います。

 

メーカーを経験することで見えてくるファブの魅力

 

私のショッピングサイトは、「BASE」という仕組みを使っていて、ゼロ円でサイトを作れるサービスを使ってます。とりあえず直販のサイトを作って、商売を始めました。その後、野外イベントに出展した実績をFacebookで発信すると、BASEさんから「渋谷でイベントするから出てみますか?」って誘われ出展の機会をもらいました。出展してみると、結構横のつながりもでき、仲良くなった方から販路を広げるための方法を教えてもらえました。展示会とか見本市とかにでるとバイヤーさんが集まるし、卸しをしたら結構広がっていくよって。少しずつ出展しながら、色々声かけてもらいながら、少しずつ販路ができてきたかな、という気はします。

振り返ると、展示会などに出ながら販路広げて量産してきました。量産といっても、家で頑張って量産してるんですが、そろそろ追いつかなくなってきそう。「量産をどうするか」も私たちの課題です。そんな風に、課題はその都度、色々出てきます。

 

メーカーの体験は別の経験値として、受託制作の際のお客さんにも色々提案をできるようになってきました。メーカーさんの事業を「じぶんごと」として理解しやすくなり、受託制作のお仕事で提案する際、内容も変わってきました。

 

「じぶんごと」についてですが、メーカーさんからホームページの発注があったとしても、今までは「メーカーのことはわからないだろうけど、ホームページは専門だと思うから作ってね」という関係でした。今では、まず関係が対等に近づいてきた感覚です。「デザイナーをしてるけどメーカーもしている人にお願いをする」と、卸のことだったり、展示会、インスタグラムでどうやって写真撮ってるかなど、メーカーをやってる人が実際にどうやっているのか「相談して解決していく」という関係性になりました。「発注→提案」から、「相談→解決」に変わってきているのは、最近の仕事で感じるようになっています。

 

これまでだと「こんな店にするからこんなWEB作って」というウェブサイト制作の仕事等しか受けていなかったんですが、メーカーをやっていたおかげで、ウェブサイト以外のところでも仕事が受けられるようになりました。物撮りから始め、カメラはどれを使うといいのか、撮影のレクチャー、インスタでこう発信していこう、仕入先の紹介、私の商品を卸してたりもして、色々関わるジャンルがふえています。

デザインしたものを実際の形にできると、また新しい表現の提案ができるので、これまでの紙やWebのデザイン以外、プロダクトのデザイン提案もできるようになってきました。そこがファブの魅力だと思います。

 

お客さんに提案する時に設計図ではなく、自分で実物をつくって「これでどうでしょう」と見せられるので、「ファブを使う」ことはグラフィックデザイナーさんもパッケージの案件などで役に立つだろうと思います。

今日は、レーザーカッターで出来ることを知ってもらうことで、すごく仕事の幅を広げられる可能性を感じてもらえたら幸いです。グラフィックデザイナーさんも、プロダクトをやってみることでメーカーさんのことも理解しやすくなるのかなと思います。

 

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